緑藻エビヤドリモ属藻類が外部寄生したミナミテナガエビ(十脚目,テナガエビ科)の種子島,島間川からの再発見

淡水産コエビ類に寄生するユニークな生活史 を 持 つ こ と で 知 ら れ る エ ビ ヤ ド リ モ 属 Cladogonium Hirose et Akiyama, 1971 (Hirose and Akiyama, 1971;秋山・大谷,1994) に関する最初 の知見は,荻島(1950)による埼玉県大宮市(現 さいたま市)の氷川神社境内の池やその近郊の水 路で採集したヌマエビの亜種ヌカエビ Paratya compressa improvisa Kemp, 1917 の腹部腹面に緑藻 が着生していることの発見とその藻類の観察で あった.次いで,上田(1957, 1963)により 1956 年に愛媛県肱川で採集されたミゾレヌマエビ Caridina leucosticta Stimpson, 1860 と,1962 年 に 鹿児島県種子島の島間川で採集されたミナミテナ ガエビ Macrobrachium formosense Bate, 1868 にも 本属藻類が寄生していることが報告された.上田 (1957,1963) の 標 本 を も と に,Hirose and Akiyama (1971) はこれら 3 種のコエビ類に寄生す る藻類を 1 種として捉え,藻体は細胞が 1 列に連 なった単列糸状で,1 細胞内に複数の核を持つこ となどから,シオグサ科の新属,新種 Cladogonium ogishimae Hirose et Akiyama, 1971 として記載した. その後,香村(2006)により和名,エビヤドリモ の提唱と,宿主である淡水エビの種は記していな いが沖縄島にも分布するという記述がされるまで 新しい情報はなかった.近年,著者らは佐賀県六 角 川 水 系 牛 津 川 に お け る ミ ナ ミ ヌ マ エ ビ Neocaridina denticulata (De Haan, 1844) と,宮崎県 沖田川におけるヌマエビ P. compressa (De Haan, 1844) の亜種に寄生していた本属藻類を報告した (芹澤(松山)ほか,2014). 芹澤(松山)ほか(2014)は,荻島(1950)や Hirose and Akiyama (1971) のスケッチや写真,記 載との比較から,本属には複数の種が存在する可 能性を示唆した.また,最近の著者らの研究から, 本属にはシオグサ目で一般に認められている生殖 細胞が単子嚢内に形成されるタイプだけでなく, これまで緑藻植物門では確認されていない生殖細 胞が複子嚢内に形成されるタイプが存在するた め,シオグサ目とは独立した新目を設立すべきで あること,少なくとも本属内には 3 種が存在する 可能性があること,沖田川産の宿主はヌマエビの 亜種ではなくヌマエビであったことなどが明らか に な り つ つ あ る( 例 え ば, 芹 澤 ほ か,2015, 2016;芹澤(松山)ほか,2016).しかしながら, 神戸大学に保管されていた模式標本は震災により 紛失しており,種の特徴を詳細に比較して新種記載するためには,50 年以上前に確認された地域 において本属藻類が寄生したエビを採集する必要 がある. 本研究では,上田(1963)により種子島の島 間川で採集されたエビヤドリモ属藻類が寄生した ミナミテナガエビを再度獲得することを目的とし て,2015 年と 2016 年に種子島の島間川を含む 31 河川で採集を行った.その結果,このエビを島間 川では 54 年ぶりに,鹿鳴川では初めて採集した ので,これを報告する.