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大隅半島における淡水産コエビ類の分布

今井 正・大貫貴清・鈴木廣志

Abstract / Introduction / Summary:

大隅半島は鹿児島県最南端に位置する半島で あり,西岸は鹿児島湾に,東岸は太平洋に面する. 大隅半島に生息する淡水産コエビ類については, 鹿児島県立博物館(1989, 1990, 1992)がテナガエ ビ 類 の 調 査 を 行 い, ミ ナ ミ テ ナ ガ エ ビ Macrobrachium formosense Bate, 1868,ヒラテテナ ガエビ M. japonicum (De Haan, 1849),テナガエビ M. nipponense (De Haan, 1849) の 3 種を確認して いる.池田とその共同研究者はヌマエビ Paratya compressa (De Haan, 1844) とヌカエビ P. improvisa Kemp, 1917 を扱った一連の研究の中で,久保田 川をヌマエビの産地として用いている(例えば, 池田,1999).また,Suzuki et al. (1993) は鹿児島 県の島嶼部を含めた淡水産コエビ類の調査の中 で,大隅半島についても報告しており,ヌマエビ 科 の オ ニ ヌ マ エ ビ Atyopsis spinipes (Newport, 1847), ミ ゾ レ ヌ マ エ ビ Caridina leucosticta Stimpson, 1860, ヤ マ ト ヌ マ エ ビ C. multidentata Stimpson, 1860,ヒメヌマエビ C. serratirostris De Man, 1892,トゲナシヌマエビ C. typus H. Milne Edwards, 1837, ヌ マ エ ビ, ミ ナ ミ ヌ マ エ ビ Neocaridina denticulata (De Haan, 1844),テナガエ ビ科のミナミテナガエビ,ヒラテテナガエビ,コ ンジンテナガエビ M. lar (Fabricius, 1798),コツノ テナガエビ M. latimanus (Von Martens, 1868),ス ジエビ Palaemon paucidens De Haan, 1844 を記録 するとともに,肝属川における流程分布を調査し ている.さらに,鈴木(1997)は大隅の甲殻類相 を取りまとめ,鈴木・黒江(1997)は雄川と一ノ 谷川の流程分布を調査している. 近年,鹿児島県が分布の北限とされる種のう ち(鈴木・佐藤,1994),オニヌマエビ,ツノナ ガヌマエビ C. grandirostris Stimpson, 1860,ザラ テテナガエビ M. australe (Guérin–Méneville, 1838), コンジンテナガエビが太平洋沿岸の各県から相次 いで報告されるようになった(例えば,今井ほか, 2002,2008,2012,2015). こ の よ う な 事 例 や Suzuki et al. (1993) の報告から 20 年以上が経過し ていることから,大隅半島における淡水産コエビ 類の現状を知っておく必要がある. 本研究では,大隅半島における淡水産コエビ 類の分布の現状を明らかにすることを目的とし て,先端の地域に位置する 15 河川で調査を実施 したので,その結果を報告する.