マングローブは熱帯・亜熱帯の河口汽水域に生育する耐塩性植物の総称であり,それによって形成される林のことをマングローブ林という.陸域から海域への移行帯(エコトーン)を形成し,それぞれの地に適応した特徴的な生物が生息する場となっていることから,生物多様性保全上も重要な地域と位置づけられている(松田, 2011 ).マングローブ域では,鳥類や魚類のほか,甲殻類などの多くの無脊椎動物など多様な生物が生息しており,これらの生物からなる生態系をマングローブ生態系と呼ぶ(福岡ほか, 2010 ).鹿児島県には奄美大島や屋久島,種子島などにマングローブ林は広がっており,特に奄美大島の住用川と役勝川に広がるマングローブ林は県内最大である.住用マングローブ林はメヒルギとオヒルギから構成されている.過去に林・山本( 2011 )や三浦( 2012 )が住用マングローブ林とその前浜に広がる干潟での調査を行った.しかし,いずれも広い林内における底生生物の分布と生息環境の空間変異をとらえていない.そこで本研究は住用マングローブ林の広い範囲で調査をし,出現した生物を記録し,マングローブ林内における底生生物の分布について明らかにすることを目的とした.

住用マングローブ林における底生生物の分布(川瀬誉博・藤井椋子・古川拓海・山口涼・山本智子)