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写真に基づく福井県初記録のウシマンボウ

澤井悦郎

Abstract / Introduction / Summary:

ウ シ マ ン ボ ウ Mola alexandrini (Ranzani, 1839) は,世界最重量硬骨魚としてギネス世界記録に掲 載されているフグ目マンボウ科 Molidae の大型魚 類である(例えば,Sawai et al., 2020).本種は世 界中の温帯・熱帯海域に分布し,同属のマンボウ Mola mola (Linnaeus, 1758) やカクレマンボウ Mola tecta Nyegaard et al., 2017 とよく混同される(Sawai et al., 2017, 2020).本種の小型個体はマンボウや カクレマンボウの形態とよく似るが,大型個体に なると頭部と下顎下が顕著に隆起すること,舵鰭 (尾鰭に見える部位)縁辺部が半円形であること, 胸鰭より後方の体表に頭尾方向の盛り上がったシ ワがないこと(全長 110 cm 以上)などの形態的 特徴から,外観で比較的容易に同属他種と識別さ れる(Sawai et al., 2017, 2020;澤井,2021a, b). ウシマンボウは日本近海でもマンボウと混同 されることが多く,本種の漁獲が稀であることが そ の 一 因 と な っ て い る( 例 え ば, 澤 井 ほ か, 2011).これまで本種の出現が確認されている都 道府県は以下のとおりである[本種の各都道府県 の記録に関する文献は澤井(2021a, b)で詳細に レビューされているためそちらを参照されたい]: 北海道(太平洋側),岩手県,宮城県,富山県, 石川県,茨城県,千葉県,神奈川県,東京都(小 笠原諸島),静岡県,三重県,山口県,徳島県, 高知県,大分県,長崎県(有福島),鹿児島県(喜 界島,奄美大島),沖縄県(伊江島,与那国島). このたび,2021 年 11 月に福井県初記録と考え られるウシマンボウが福井県小浜市沖で漁獲され た(福井新聞社,2021;日本ニュースネットワー ク,2021).ニュースを配信した新聞社や漁業関 係者に聞き取り調査を行い,本個体に関するより 詳細な情報を得たため,ここに報告する.