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ハリガネワラビとヤワラシダ(ヒメシダ科)をトカラ列島中之島に記録する

田金秀一郎・丸野勝敏・鈴木英治

Abstract / Introduction / Summary:

ハリガネワラビThelypteris japonica (Baker) ChingとヤワラシダThelypteris laxa (Franch. et Sav.) Chingはヒメシダ科(Thelypteridaceae)に属し,どちらも日本・中国・台湾・韓国に分布する夏緑性のシダである(岩槻,1992;Lin et al., 2013;海老原,2016).日本においては,ハリガネワラビは北海道~九州にかけて,ヤワラシダは本州・四国・九州に広く分布し(南限はどちらも鹿児島県屋久島)(初島,2004;海老原,2016),それ以南のトカラ列島(志内・堀田,2016)や奄美群島(堀田,2013),沖縄県(初島・天野,1994;島袋,1997)では2種の分布はこれまでに確認されていない. 著者らは2019年10月8–9日にトカラ列島中之島において植物相の調査を実施した際,これら2種の分布を確認し,証拠標本を得ることができた(図1, 2).今回の発見はそれぞれの種の日本における分布南限の更新とトカラ列島の植物相を特徴づけるという点で注目に値するため,ここに正式に報告する.