/ 046-048

水抜き調査によって明らかになった鹿児島県霧島市国分広瀬の小村新田干拓潮遊池の魚類相

中村潤平・樋之口蓉子・本村浩之

Abstract / Introduction / Summary:

小村新田干拓潮遊池は鹿児島県霧島市天降川河口東側と国分平野排水路水戸川の間に位置し,鹿児島湾に面する汽水池である.小村(霧島市国分広瀬)は遠浅の海岸であったが,江戸末期の弘化2年(1845年)に新田開発のための干拓が起工され,嘉永4年(1851年)に完成した(国分郷土誌編纂委員会,1997).堤防は幾度かの台風で崩壊したがそのつど補修されたものの,昭和26年(1951年)10月のルース台風で大きな被害を受けた(国分郷土誌編纂委員会,1997).その後,昭和39年度(1964年度)から50年度(1975年度)にかけてコンクリート製の堤防と樋門が国により整備された(鹿児島県姶良・伊佐地域振興局農林水産部農村整備課,私信).堤防の内側には流入する海水の調整をする潮だまり池(潮遊池)が設けられており(国分郷土誌編纂委員会,1997),潮遊池は樋門により海と繋がっており,干拓地内から淡水が流入している.

小村新田干拓潮遊池では毎年お盆明けの8月16日に投網で「エッナ(ボラMugil cephalus cephalus Linnaeus, 1758の小型個体)」を獲って食べる伝統行事「ハンギリ出し」が小村新田魚獲り組合により行われている(広瀬の歴史編集委員,1998;惣田征郎氏,私信).現在「ハンギリ出し」が行われているのは小村新田干拓潮遊池のうち住吉大明神前の1区画である.その区画の東側にはルース台風以前に造られた石積みの護岸が残されており(堂園隆司氏,私信),他の3面はコンクリート護岸となっている.また,住吉大明神付近にはわずかにヨシが生えている. 近年,「ハンギリ出し」行事において「エッナ」があまり獲れなくなり,伝統行事を守るため地域住民らが「エッナ」減少の原因を明らかにするよう霧島市に働きかけた.そこで,霧島市は「エッナ」の減少の原因を明らかにする目的でテレビ東京の番組「緊急SOS!池の水ぜんぶ抜く大作戦」の招致を行い,2019年1月14日に番組の収録に伴い小村新田干拓潮遊池において水抜き調査が行われた.その際に,外来種の生息状況と魚類相の現状把握のため,水抜き後の池から魚類を採集し出現魚種の調査を行った.その結果,標本(16種)と現場での目視(1種)に基づき9科17属17種の魚類が確認された.本報告では,水抜き調査で確認された小村新田干拓潮遊池における魚類相を報告する.