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モヨウキカイウツボの奄美群島からの初めての記録,本種の国内における分布記録の再検討,および水中写真に基づくUropterygius cf. polyspilusの記録

和田英敏・本村浩之

Abstract / Introduction / Summary:

ウツボ科キカイウツボ属Scuticariaは,肛門が体中央部よりはるかに後方に位置する,尾部が非常に短い,不対鰭が不明瞭で,尾部の後端部にのみ存在する,両顎に2列の鋭い円錐歯列をもつ,および前鼻孔と後鼻孔が筒状であることなどの形態的特徴をもち(Böhlke and McCosker, 1997),日本国内を含む全世界からモヨウキカイウツボScuticaria tigrina (Lesson, 1828)とキカイウツボScuticaria okinawae (Jordan and Snyder, 1901)の2有効種が知られている(波戸岡,2013; Fricke et al., 2019).

モヨウキカイウツボはこれまで国内において紀伊半島,伊豆諸島八丈島,小笠原諸島父島,屋久島,口永良部島,沖縄諸島および西表島から記録されており(山川ほか,1994; Senou et al., 2002; Tawa et al., 2012; Motomura and Harazaki, 2017;木村ほか,2017;波戸岡,2018),サンゴ礁域の浅場に生息し,小型の魚類や甲殻類などを捕食する生態が知られている(Yukihira et al., 1994;波戸岡,2018). 2019年3月22日に奄美大島の潮間帯で1個体のモヨウキカイウツボが採集された.この標本は本種の奄美群島からの初記録となるため,ここに報告する.さらに,日本におけるモヨウキカイウツボの過去の分布記録を再検討した.