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沖永良部島の鳥類相

中村麻理子・鮫島正道

Abstract / Introduction / Summary:

鳥類相とは,その地方に生息・出現する鳥類の 種類の意である.地域別の鳥類相の把握は,広い 意味での「鳥類の保護」に通ずるものがある.  鳥の生活は年周期を通してみると,繁殖期と非 繁殖期からなり,その間に渡りを行う移動性のも のと,周年定着性のものがある.鳥類は移動の観 点から,渡り鳥(夏鳥・冬鳥・旅鳥)と留鳥(漂 鳥・真留鳥・半留鳥)に区別されるが,これらの 区分は地方によって異なることになる.例えば同 一種であっても,地方により留鳥であったり,通 過鳥に過ぎなかったりする場合がある.このこと から地方ごとの鳥類季節の研究は重要である.ま た鳥類の移動は,種類毎に渡来・渡去の時期や移 動経路が異なるため,地方ごとの情報は,自然環 境の保全という課題に応えるためにも極めて重要 な基礎資料である.  奄美諸島のような海上に点在する島は,渡り鳥 にとって重要な移動経路になっている.奄美諸島 の鳥類相や鳥類季節についての主な論文・報告は, 黒田(1969),清棲(1978),鮫島(1996),高ほ か(1997),所崎・山元(1999),中村・鮫島(2010, 2011)があるが,島嶼別での確認事例は断片的で あり,鳥類相についての詳細な情報も少ない.  今回,奄美諸島の一部である鹿児島県の沖永良 部島で 2 年間滞在する機会を得,鳥類の生息状況 を観察・記録した.本報告では可能な範囲内での 確実な記録として,絶滅危惧種に指定されている 15 種を含む 103 種が確認され,渡り鳥が通過す る重要な移動経路となっていた.絶滅危惧種なら びに稀に観察される種については,生態写真を添 えてここに報告する.