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鹿児島県薩摩半島西岸と与論島から得られたボラ科魚類オニボラ Ellochelon vaigiensis の記録

畑 晴陵・伊東正英・本村浩之

Abstract / Introduction / Summary:

ボラ科魚類 Mugilidae は,日本近海から 8 属 16 種が報告されている(Senou, 2002;瀬能ほか, 2006).そのうちのオニボラ属 Ellochelon は日本 からも報告のあるオニボラ Ellochelon vaigiensis (Quoy & Gaimard, 1825) 1 種のみからなる(Senou, 2002). Kamohara (1954) は Ellochelon vaigiensis を 標 本 に基づいて日本から初めて報告した.彼は,トカ ラ列島の宝島から採集された全長 70–80 mm の複 数の標本に基づき本種の記載を行い,和名ムナグ ロボラを提唱した.しかし,蒲原(1965)は沖縄 島から得られた全長 283 mm の標本に基づき本種 を報告し,和名オニボラを提唱した.その後,新 井・井田(1975)はムナグロボラとして全長 20– 36 mm の 2 個体を屋久島から報告した.益田ほ か(1988)は体長 23.6–31.5 mm の 3 標本(URB 78-0113–78-0115)をオニボラとして西表島から 報告し,林ほか(1992)はオニボラを奄美大島か ら報告した.さらに,Sakai et al. (2001) は 3 標本 (NSMT-P 28457, 29316, 29348)を種子島と西表島 から,Senou et al. (2006) は 3 標本(KPM–NI 10846– 10848)を沖縄県伊江島から,野村(2010)は水 中写真に基づいて高知県四万十川からそれぞれオ ニボラを報告した. 瀬能・木下(1988)は本種の国内における分 布域を千葉県以南としたが,瀬能(2000)はそれ を和歌山県以南に修正した.その後,Senou (2002) はオニボラの国内における分布を琉球列島を含む 南日本の太平洋沿岸と概括した. 2007 年 8 月 18 日と 9 月 8 日に鹿児島県南さつ ま市笠沙町沖で計 3 個体,2011 年 8 月 11 日と 12 日に鹿児島県与論島から計 4 個体のオニボラが採 集された.これらの標本は鹿児島県本土と与論島 における標本に基づく初めての記録となるため, ここに報告する.