/ 037-017

北限域のマングローブ林における底生生物相:亜熱帯域との比較

林真由美・山本智子

Abstract / Introduction / Summary:

マングローブとは熱帯・亜熱帯の河口汽水域 に生育する耐塩性植物の総称であり,それによっ て形成される林のことをマングローブ林という. 陸域から海域への移行帯(エコトーン)を形成し, それぞれの地に適応した特徴的な生物が生息する 場となっていることから,生物多様性保全上も重 要な地域と位置づけられている.マングローブ域 では,鳥類や魚類のほか,甲殻類などの多くの無 脊椎動物を含め,多様な生物が生息している.こ れらの生物からなる生態系をマングローブ生態系 と呼ぶ(福岡ら,2010). 鹿児島県内では,鹿児島市喜入,種子島,屋 久島,奄美大島でマングローブ林がみられる.北 限である鹿児島市喜入は温帯域であり,本来マン グローブが生育する気候ではないため,熱帯,亜 熱帯のマングローブ林とは異なるハビタットの利 用がされている可能性がある. 喜入のマングローブ林周辺では鹿児島大学理 学部の冨山らが研究を続けている(真木ら, 2002)が,底生生物全体が研究された例は少ない. 一方,奄美大島のマングローブ林周辺の干潟では 底生生物の調査が行われているが,マングローブ 林内の調査結果が報告された例は少ない. そこで本研究は,マングローブ林内と周辺の 干潟において底生生物の分布を調査し,底生生物 による利用パターンを,亜熱帯域と温帯域で比較 することを目的とした.今回は定性的な結果のみ を報告する.