Abstract / Introduction / Summary:
鹿児島県薩摩半島の中央に位置する南九州市 川辺町勝目の多目的用水路で,希少淡水紅藻類の オ キ チ モ ズ ク Nemalionopsis tortuosa Yoneda and Yagi, 1940 の大規模な生育地が確認された.発見 および確認に至る経緯は次のとおりである.2006 年 5 月に新地浩一郎(第一発見者)がオキチモズ クらしい数株をみたと第一著者に同定依頼があっ た.オキチモズクは清澄な環境にしか生育しない 絶滅危惧種に指定されている植物であり(鹿児島 県,2003),生活排水も流入する多目的用水路で の生育は考えられないという先入観で確認を怠っ ていた.2007 年 3 月,新地氏の確認した場所か ら約 500 m 下流域で広範囲にわたり,同種の大群 生地を偶然確認し,地域全体の分布域ならびに生 育状況の簡易調査を行った.その結果,約 1,000 m の範囲内に大規模な群落として分布することが 確認された(図 1). 当地はシラス台地と河岸段丘でできた地形で あり,崖下から豊富な湧水がみられる地域特性が ある.特に川床からの湧水もみられ,本種の生育 環境にほぼ一致していた(右田,1998). 2007 年 5 月 13 日,川辺生態環境調査グループ により合計 5,664 株を計測した. オキチモズクやチスジノリの生育規模の表現 は,「株数」を記録し,株数により規模を把握する. 学術上の論争は材料または方法の相違に起因する ことが少なくない.株数の計測に一定の規則(定 義)を決め,それに忠実に従う形で合計株数を算 出した.規則(定義)に沿った詳細で正確な記録 であるので,後日の検証にも耐えられるような記 録資料となる.なお,この報告書はあくまでも速 報であり,要点だけを簡単に述べたものである.