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鹿児島県新湯温泉の化学的研究

坂元隼雄

Abstract / Introduction / Summary:

鹿児島県霧島市(旧姶良郡)牧園町にある「新 湯温泉」は,川床から噴出する噴気ガスによって 地下水などが温められた天然(自然)温泉を利用 する小規模温泉であった.この温泉は噴気ガス中 に含まれる硫化水素を地表水が溶かし込み,アト ピー性皮膚炎や水虫などの疾患に効能があること が注目され,県外からの利用客が増加するように なった.したがって,自然の噴気ガスによる湯量 では需要を賄うことができなくなった.その対応 策として地下掘削(ボーリング)によって得られ た噴気ガスを沢水に吹き込んで造る人工造成温泉 (以後は造成温泉と略記する)が造られ,利用さ れるようになった. 1989 年 3 月 26 日,新湯温泉の治療泉の脱衣場 で硫化水素による母子二人が死亡する事故が起 こった.著者らは事後直後の試料の採取は諸事情 から困難であったが,1989 年 5 月から 1990 年 7 月までの新湯温泉の噴気ガス・造成温泉等の調査 を行った.その結果を報告する. 今後,このような痛ましい事故を繰り返さな いことを願って記すことにする.