Abstract / Introduction / Summary:
アフリカマイマイの殻形質比較による個体群間変異の解析を行った.1987年から1989年にかけて,小笠原諸島父島の4箇所の個体群から採集されたアフリカマイマイのサンプル計200個体をKameda式,Urabe,Tomiyama式の3種類の計測法を用いて殻形態を計測した.その計測値を元に,ユークリッド距離とマハラノビス距離を用いてクラスター分析によりデンドログラムを作成した.その結果,ユークリッド距離を用いて作成されたデンドログラムでは採集ポイントごとにクラスターを形成する結果となったが,マハラノビス距離を用いて作成されたデンドログラムは各地点間の差がないことを示す結果となった.ユークリッド距離でクラスター分析を行った結果,3種類の計測法のいずれの場合も採集ポイントごとにクラスターを形成した.これは各個体群間で殻の大きさの差を反映したものであり,本種の環境変異を強く反映したものと考えられる.マハラノビス距離によりクラスター分析を行った結果では,殻の形態差を反映した結果となり,明瞭なグループ分割はできなかった.以上の結果から,アフリカマイマイが父島内部の個体群間で遺伝的分化を起こしているとは考えにくいことが示唆された.