Abstract / Introduction / Summary:
ヤマネ Glirulus japonicus は,本州,四国,九州 に分布する 1 属 1 種の日本固有種で,1975 年に 国の天然記念物に指定されている(金子,2005; Iwasa, 2009).生息域は低山帯から亜高山帯の森 林で,主に夜間・樹上活動をするが,食物を貯蔵 する習性はなく食物が欠乏する寒冷時期に冬眠す る(湊,1986;中島,1996;芝田,2000).九州 におけるヤマネの生息状況や分布に関しては,こ れまでの文献資料で福岡,長崎,佐賀,熊本,大 分,宮崎の各県で生息の再確認や新産地が報告さ れ て い る( 湊 ほ か,1998; 佐 藤,1998; 馬 場, 2003;鶴田ほか,2001;木場ほか,2008;安田・ 栗原,2009;松尾,2010;坂田ほか,2010;安田 ほか,2012).また,これらの文献資料等を基に, 九州のヤマネにおける生態や保全上の課題も含め て総説としてまとめられている(安田・坂田, 2011). 鹿児島県では,霧島山(日野・森田,1964), 旧大口市(日野・森田,1964;森田,1974),稲 尾岳(森田,1986)での報告があるが,これらの 生息確認記録は 1967 年以前で約 50 年前のもので あり,現状は不明であった.しかし,最近の大隅 半島におけるヤマネの本格的な生息調査で,高隅 山系,肝付山系および稲尾岳山系の一部地域にお いてヤマネが撮影され,本種の生息が再確認され た(船越ほか,2014).そこで,今回はかつて生 息していたとされる霧島山や伊佐市(旧大口市) を含む鹿児島県北部とその周辺域および薩摩半島 の一部地域で生息実態調査を行い,これらの地域 における本種の生息を確定するとともに,地域個 体群としての位置づけと今後の課題を検討した.