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静岡県大瀬崎におけるマンボウ属の出現状況

澤井悦郎・相原岳弘

Abstract / Introduction / Summary:

静岡県の大瀬崎ではレクリエーションとして潜水するスキューバーダイバーの間で,チョウチョウウオ科Chaetodontidae シラコダイChaetodon nippon Steindachner and Döderlein, 1883 によるマンボウ科Molidae マンボウ属Mola への掃除行動の観察が人気となっている(白鳥,2008;安延, 2011;氏家,2013; Thys et al., 2020).大瀬崎に出現するマンボウ属の知見は少なく,これまでに知られている情報は以下のとおりである:春(4–6 月) と秋,水温16°C 前後,水深およそ20–50 m の間で, 目視による推定全長50 cm 前後から2 m 前後(推定全長1–1.5 m の個体が多い)のマンボウ属1–8 個体が大瀬崎に出現する(瀬能ほか,1997;伊藤, 1999; 白鳥,2008; 安延,2011; 氏家,2013; Thys et al., 2020).これらの知見はスキューバーダイバーの目視観察による簡単な記述であり,学術的に詳しく調査されたものではない.また,大瀬崎に出現するマンボウ属は一般的にマンボウMola mola (Linnaeus, 1758) とされているが(瀬能ほか,1997; 伊藤,1999; 白鳥,2008; 安延, 2011;氏家,2013; Thys et al., 2020),日本近海にはウシマンボウMola alexandrini (Ranzani, 1834) も出現することが近年明らかとなり( 例えば, Sawai et al., 2017;澤井,2021),大瀬崎におけるこれまでの知見は両種の情報が混同されていた可能性がある. そこで本研究は,静岡県大瀬崎のスキューバーダイバーによって撮影されたマンボウ属の写真や動画を収集し,大瀬崎におけるマンボウ属の出現状況(出現する季節,水温,水深,推定全長,個体数)を改めて調査した.