Abstract / Introduction / Summary:
日本では33種の淡水産エビ類(ヌマエビ科23種,テナガエビ科10種)が生息している.その中でもテナガエビ類は地域によっては漁獲や養殖などが行われており,ヌマエビ類は釣りの生き餌や観賞用として利用されている.鹿児島県では,これまでに19種類の淡水産コエビ類(ヌマエビ科10種,テナガエビ科9種)が確認されており(鈴木・佐藤,1994),テナガエビ科に関しては日本に生息する大半の種が鹿児島県で見られる.
近年,鹿児島県が分布の北限とされていたコンジンテナガエビが静岡県(伊藤,1995)や神奈川県(丸山,2015)で確認されたり,同様に鹿児島県の大隅半島を分布の北限とするオニヌマエビが神奈川県で採集されるなど(丸山,2015),淡水産コエビ類の地理的分布域に変化が見られるようになった.鹿児島県内でも,今井ほか(2017)が大隅半島で行った調査では,以前では確認されていなかったツノナガヌマエビCardinia longirostrisとザラテテナガエビMacrobrachium australeが確認されたなどの報告もある.また,ヌマエビ科の種は日本各地で個体数が減少しているとされており,これらの原因としてはダムなどの人工物による両側回遊種の遡上阻害や,農薬などの影響と考えられている(畠山ほか,1991;佐藤ほか,1994;浜野ほか,1995). そこで本研究では,1980年代に淡水産小エビ類の調査が行われた(佐藤ほか,1994)万之瀬川にて,淡水産エビ類の分布と生息密度の変化を把握するための調査を行った.