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鹿児島県喜入干潟おけるカワアイ(ウミニナ科)の生活史

真木英子・大滝陽美・冨山清升

Abstract / Introduction / Summary:

鹿児島県喜入町の愛宕川河口干潟には,ウミニナ科に属するウミニナ,およびキバウミニナ科に属するカワアイ,へナタリ,フトヘナタリのウミニナ類4種が同所的に群生している.ウミニナ科,およびキバウミニナ科の貝類は汽水域や塩分の少ない内湾的環境の砂泥底ないし泥質の干潟に生息しており,日本の干潟では最も普通に見られる巻き貝である.本研究では,生態のよく分かっていないカワアイの分布様式や生活史を明らかにすることを目的とした.加えて,カワアイを含め同所的に生息するウミニナ類4種の潮間帯における生活場所ニッチ分割に関しても考察した.毎月1回大潮または中潮の日の干潮時に調査を行った.干潟の汀線際に3つの調査区を約50 m間隔で設けた.3つの調査区において,50 cm × 50 cmのコドラートをランダムに5ヶ所置き,各種ごとに出現数を記録し,カワアイについては殻,高を0.1 mm単位で計測し記録した.また,礫,砂礫,砂,砂泥①(砂が多い),砂泥②(泥が多い),泥の6つの環境条件を選び,25 cm × 25 cmのコドラートをそれぞれ20–24ヶ所ランダムに置き,コドラード内の4種の出現数を数えた.また,4種間の胃内容物の比較観察も行った.その結果,カワアイは,小型個体は春から秋にかけて出現し,大型個体は,季節・場所に関わらず見られる傾向にあることがわかった.4種の個体数の季節変化は,上流側では,カワアイの出現率が一年を通して高く,中流側ではウミニナの出現率が高い傾向にあった.底質選好性は,カワアイは砂泥地①(砂が多い)や砂泥地②(泥が多い)を好み,ウミニナは礫地,砂礫地,砂地を好み,へナタリは砂泥地②(泥が多い)や泥地を好む傾向にあった.蛍光顕微鏡による,4種の胃内容物観察の結果,4種間の顕著な差は検出できなかった.