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鹿児島県本土におけるヨウジウオ科魚類タツノイトコの標本に基づく記録

荒木萌里・山田守彦・本村浩之

Abstract / Introduction / Summary:

ヨウジウオ科タツノイトコ属Acentronuraタツノイトコ亜属Acentronuraは,尾鰭をもたないこと,尾部が渦巻き状であること,眼球に骨質の小板がないこと,頭部が躯幹部とほぼ同一体軸上にあること,躯幹部と尾部の上隆起線が連続すること,躯幹部中央隆起線と尾部下隆起線が連続すること,および隆起線上に大きな棘をもたないことなどで特徴づけられる(Dawson, 1985).日本からはタツノイトコA. (A.) gracilissima (Temminck and Schlegel, 1850)とタツノハトコA. (A.) tentaculate Günther, 1870の2種が記録されている(瀬能,2013).

タツノイトコは日本国内ではこれまでに伊豆諸島,小笠原諸島,相模湾から高知県柏島までの太平洋沿岸,山口県の日本海側沿岸,長崎県,鹿児島県本土,奄美群島,および沖縄諸島から記録されている(Dawson, 1985;グローバル・スポーツ・クラブ,1992;Senou et al., 2002, 2006;山崎,2004;山田,2011;河野ほか,2011;瀬能,2013;Nakae et al., 2018).鹿児島県本土における記録は水中写真に基づいており,これまで分布記録の根拠となる標本は得られていなかった. 2016年4月23日に鹿児島県南さつま市笠沙町(薩摩半島西岸)から,2018年11月16日に鹿児島市稲荷川河口(鹿児島湾)からそれぞれ1個体のタツノイトコが採集された.これらの標本は鹿児島県本土におけるタツノイトコの標本に基づく初記録となるため,ここに報告する.