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鹿児島県から得られたクロサギ科ホソイトヒキサギGerres macracanthusの記録

畑 晴陵・伊東正英・本村浩之

Abstract / Introduction / Summary:

クロサギ科 Gerreidae は日本近海には 2 属 14 種
が分布しており(波戸岡,2013),このうち 13 種
が ク ロ サ ギ 属 Gerres に 含 ま れ る( 波 戸 岡,
2013).Gerres macracanthus はインドネシア・ジャ
ワ島のバタビア(現在のジャカルタ)から採集さ
れた全長 95–131 mm の 6 標本に基づき Bleeker
(1854) に よ っ て 新 種 記 載 さ れ た. そ の 後,G.
macracanthus はイトヒキサギ G. filamentosus の新
参 異 名 と さ れ る こ と が 多 か っ た( 例 え ば
Kühlmorgen-Hille, 1974; Woodland, 1983) が,
Iwatsuki et al. (1996) によって有効種とされた.ま
た,Iwatsuki et al. (1996) は本種 1 個体(IORD 76–
1347,体長 142.0 mm)を西表島から報告し,同
時に新標準和名ホソイトヒキサギを提唱した.そ
の後,竹内ほか(2011)は本種 1 個体(KUN-P
42019)を和歌山県南部から報告した.現在,ホ
ソイトヒキサギの国内における分布は西表島と和
歌山県とされている(竹内ほか,2011;波戸岡,
2013;吉郷,2014).
 2006 年 11 月 16 日に鹿児島県南さつま市笠沙
町沖で,2013 年 10 月 10 日に肝属郡肝付町内之
浦湾でそれぞれ 1 個体のホソイトヒキサギが定置

網により採集された.これらの標本は鹿児島県に
おける本種の標本に基づく初めての記録となるた
め,ここに報告する.