古くから日本人に親しまれてきたニホンイシガメ Mauremys japonica は日本固有のイシガメ科イシガメ属のカメである.ただし、生物学的な関心が寄せられたことはあまりなく、まして個体数の増減について論じられることはあまりなかった.ところが、同所的に生息するクサガメ M. reevesii が大陸由来の外来種であることが明らかになり(Suzuki et al., 2011),さらにニホンイシガメとクサガメの間に稔性のある雑種ができること(Suzuki et al., 2014),さらに西日本各地ではミシシッピアカミミガメ Trachemys scripta elegans やクサガメの方がイシガメより個体数が多いこと(谷口ほか,2015)などが明らかになり,にわかにその減少が危惧されるようになった.それにより.環境省のレッドリスト 2015 の準絶滅危惧種(NT)に掲載され(環境省,2015),本報告の土地が存在する鹿児島県のレッドデータブックでも準絶滅危惧種と位置づけられている(鹿児島県,2014).本種の保護において,外来種とされるようになったクサガメとの間に雑種が生じることは,両種の間に遺伝子の浸透が起こることを意味しており,実際に遺伝子が浸透すると進化学的に純粋な種が復元できなくなることから特に懸念される問題となっている.従って,クサガメの侵入していないニホンイシガメの生息地は,ニホンイシガメの保全上極めて重要だと考えられている.そのような状況において,我々は薩摩半島の南部の南九州市でクサガメがまだ侵入していない二ホンイシガメの生息地を確認したのでここに報告する.

薩摩半島に残されたニホンイシガメの生息地とその重要性(中村優洋・亀崎直樹)