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鹿児島県産クサビフグRanzania laevis若魚の形態に関する若干の知見

澤井悦郎・山田守彦

Abstract / Introduction / Summary:

クサビフグRanzania laevis(Pennant, 1776)は,世界中の温帯・熱帯域に分布するマンボウ科クサビフグ属の海産魚類で,マンボウ科の中では全長1 m以下の小型種である(波戸岡・萩原,2013).本種は胸鰭が尖ること,背側から臀側に向かって斜め直線状の舵鰭を持つこと,頭部に黒く縁取られた白い横縞が複数あることなどでマンボウ科の他2属と外観的に識別されるが,出現予測が難しいため,日本国内における標本数は少なく,稀種とされている(高山,2007;波戸岡・萩原,2013). このたび,2016年6月に鹿児島県南さつま市笠沙町からクサビフグ1標本が得られた.同町では既に鹿児島県初記録として本種1個体(標本番号KAUM–I. 393)が2006年8月に漁獲され,鹿児島大学総合研究博物館に保存されている(高山,2007;本村・櫻井,2008).しかし,その後鹿児島県内での文章化された本種の記録はなく,本報告は鹿児島県内2例目の記録になると考えられたためここに報告する.また,本標本の発育段階区分の検討,鹿児島大学総合研究博物館に保存されていた本種の他個体や既報(澤井,2016;澤井・山田,2017a)のマンボウ科の他2属(マンボウMola sp. B,ヤリマンボウMasturus lanceolatus)との形態比較も行った.

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