琉球列島には 7 属 18 種のヌマエビ科エビ類と 2 属 12 種のテナガエビ科エビ類が分布する.両 科ともそれぞれ 10 種が,インド-西太平洋型も しくは黒潮型の分布を示す小卵多産型の両側回遊 種である(諸喜田,1979, 2003a, b). 鹿児島県の南端,琉球列島のほぼ中央の北緯 27°04′,東経 128°40′ に位置する与論島は,サン ゴ礁に囲まれた周囲約 22 km,総面積 20.82 km 2 の平坦な島である.河川などの表面水系はほとん どなく,陸水域としては,島の各地に点在する湧 水地と雨水を溜めた溜池,および排水路のみであ る.従って,両側回遊種の生息には至って不向き な環境と考えられ,与論島における陸水産甲殻類 の研究はきわめて少ない.諸喜田(1975, 1979)は, 琉球列島の陸水産甲殻類研究の一環として,与論 島のクラゴーを調査した.その結果,トゲナシヌ マ エ ビ Caridina typus と ヒ ラ テ テ ナ ガ エ ビ Macrobrachium japonicum の 2 種の生息を報告し た.また,鈴木ほか(2011)は,同島の 6 カ所の 湧水地や水溜まり,および側溝においてヌマエビ 科エビ類 2 種とテナガエビ科エビ類数種を確認し ている.しかしそのほとんどが両側回遊種として 知られる陸水産エビ類で,これらのエビ類が,表 面水系のほとんどない与論島という特異な環境の 下,どのようにして生息しているかについての報 告はない. 著者らは,鈴木ほか(2011)の研究に引き続き, 与論島において陸水産エビ類に関する調査を行っ たところ,若干の知見が得られたのでここに報告 する.

鹿児島県与論島における陸水産エビ類の生息状況(鈴木廣志・柴田慧菜・石走和義)