Abstract / Introduction / Summary:
オビハタEpinephelus fasciatomaculosus (Peters, 1865)とモヨウハタEpinephelus quoyanus (Valenciennes, 1830)はともにハタ科マハタ属魚類であり,それぞれ日本からボルネオ島にかけての西太平洋と,アンダマン諸島から日本,オーストラリア東岸にかけてのインド・西太平洋に分布する.両種とも台湾や中国・香港においては刺網や釣りなどで多獲され,食用魚として重要である(Randall and Heemstra, 1991; Heemstra and Randall, 1993, 1999).
しかし,2種はいずれも日本においては報告例の少ない,非常に稀な種であり,モヨウハタに関しては,正確な国内における分布域も長らく不明であり(瀬能,2013),近年になって琉球列島における標本に基づく分布が確認された(Hata et al., 2016).オビハタにおいては,これまで和歌山県と長崎県からのみ記録されていた(瀬能,2013). 鹿児島県における魚類相調査の過程で,薩摩川内市沖と種子島近海から計2個体のオビハタが,枕崎市沖から1個体のモヨウハタが採集された.これらの標本はそれぞれ,鹿児島県におけるオビハタの,九州沿岸におけるモヨウハタの標本に基づく初めての記録となるため,ここに報告する.