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マンボウ属魚類の分類形質として有効な鱗の部位の探索

澤井悦郎

Abstract / Introduction / Summary:

マンボウ[Mola sp. B(山野上ほか,2010)]は, ミトコンドリア DNA を用いた系統解析の研究が 始まるまで,日本近海では長い間ウシマンボウ [Mola sp. A(山野上ほか,2010)]と混同されて きた(山野上・澤井,2012).しかし,両種は全 長 1.8 m 以上において,形態的に異なる(Yoshita et al., 2009;澤井ほか,2015).近年新たにみつかっ た両種の分類形質の 1 つに,鱗の形状の違い(マ ンボウ,円錐形の鱗;ウシマンボウ,長方形の鱗) が挙げられる(澤井ほか,2015). 鹿児島大学総合研究博物館には,マンボウと 同定された国内でも貴重な全長 1 m 以上の液浸標 本( ホ ル マ リ ン ) が 2 つ(KAUM–I. 19082, 27983)保存されている(澤井,2016).これらマ ンボウ 2 標本を形態的に種同定する調査の中で, 魚体の部位によって鱗の形状が少し異なることに 気が付いた.鱗の形態は種によってほぼ定まって いるため有力な分類形質になるが,魚体の部位に よって鱗の形状は少し異なることが知られている (岩井,2005). そこで,最初にマンボウとウシマンボウの鱗 の形状の違いを報告した澤井ほか(2015)の剥製 標本の一部のデータも合わせて,体のどの部位の 鱗がマンボウ属の分類形質としてより適切である かを調査し,有効な部位を見出したのでここに報 告する.