Abstract / Introduction / Summary:
イサキ科 Haemulidae は日本近海には 5 属 20 種 が分布しており(島田,2013),このうち 11 種が コショウダイ属 Plectorhinchus に含まれる(島田, 2013).Plectorhinchus schotaf (Walbaum, 1792) は 紅海から得られた標本に基づき Sciaena scotaf と して新種記載された(Fricke, 2008;島田,2013). 蒲原(1937)は高知県から得られた全長 470 mm の魚を P. griseus (Cuvier and Valenciennes) として 日本における初めての記録を報告し,同時に本種 に対して標準和名ナンヨウコタイを提唱した.そ の後,Kamohara and Yamakawa (1967) は沖縄島か ら全長 343 mm の 1 個体をナンヨウコタイの和名 とともに P. schotaf として報告した.しかし,蒲 原(1937)と Kamohara and Yamakawa (1967) のナ ンヨウコタイは体側と頭部に多数の橙色斑点があ ることからオシャレコショウダイ P. flavomacu- latus (Cuvier, 1830) と思われ,P. schotaf とは別種 である.さらに,Kamohara (1958) は P. schotaf を 高知県から,蒲原(1960)と財団法人海中公園セ ンター八重山研究所(1971)は高知県沖ノ島付近 から報告しているが,詳細な記載はなく,これら の記録が P. schotaf または P. flavomaculatus のどち らを指すのかは,不明である.その後,P. schotaf は,赤崎(1984)によって土佐湾と琉球列島から 報告され,その際に新たな標準和名エリアカコ ショウダイが提唱された.畑ほか(2012)は鹿児 島県のイサキ科とシマイサキ科の魚類相を標本に 基づいて報告したが,P. schotaf は記録されてい ない.したがって,現在エリアカコショウダイの 国内における分布は土佐湾と琉球列島とされてい る(赤崎,1984;島田,2013). 2013 年 9 月 7 日に種子島沖から 1 個体,同年 9 月 9 日に馬毛島沖で 2 個体,計 3 個体のエリアカ コショウダイが採集された.これら大隅諸島から 採集された標本は鹿児島県における本種の標本に 基づく初めての記録となるため,ここに報告する.