Abstract / Introduction / Summary:
霧島市隼人町の沖に浮かぶ隼人三島は,霧島 錦江湾国立公園の設置に伴い「神造島」として平 成 24(2012)年 3 月 16 日に第 2 種特別地域およ び海域公園地区に指定された(霧島錦江湾国立公 園基礎情報,環境省).隼人に近い方から辺田小島, 弁天島,沖小島の 3 つの島をあわせて神造島とよ ぶ(図 1). 90,000–95,000 年前の姶良福山テフラや 50,000– 70,000 年前の姶良岩戸テフラなどの噴出物に関連 した噴火により,神造島を形成する流紋岩は噴出 した可能性が高いといわれている(町田・森脇, 2001).その後約 29,000 年前に姶良カルデラが形 成され(稲永ら,2006),続いて 20,000–15,000 年 前にかけて海抜が現在より 110 m 低下した.これ により当時鹿児島湾奧は陸地あるいは湖の状態に なったと思われる.その後 7,000 年前に現在の海 水面になった後,約 5,000 年前までには縄文海進 により 3–5 m ほど水位が上昇した時期があったと 思われる.辺田小島の海成段丘には下部にサンゴ の化石が残り,この縄文海進を証拠づけている(以 上大木,1999).神造島はこのような影響を受け てきた場所であり,現在生息している生きものの 歴史は 29,000 年よりも短いと想定される. 鹿児島湾の海岸沿いは第二次世界大戦後,護 岸工事により防波堤の設置が進められてきた.そ れに伴い海浜性の昆虫は生息地を追われ,減少の 様子を示している.鹿児島昆虫同好会の会誌 SATSUMA には,1952 年から鹿児島の昆虫に関 する記録が蓄積されている.例えば,海岸の岩礁 地帯に住むシロヘリハンミョウは,古い記録では 1957 年に谷山市(現在鹿児島市谷山)光山にて 8 月 1 日に 14 頭採集されている(田中,1960).そ の後 1968 年にまとめられた県内のハンミョウ記 録一覧(中尾,1968)でも,2000 年にまとめら れた県内のハンミョウ記録一覧(榎戸,2000)で も,鹿児島湾内のシロヘリハンミョウの記録は追 加されず,この 1957 年のものしかない. 神造島の海岸は護岸工事がなされていないの で,本来の鹿児島湾沿岸の様子を残していると予 想された.そこで鹿児島県立博物館の企画:フィー ルドワーカー養成講座の昆虫班で,神造島の調査 を計画した.フィールドワーカー養成講座とは, 県内の教育関係者が県内各地の自然を観察・研究 し,授業や生涯教育の場で活かすことを目的とし て募集・運営しているものである.2012 年度は 昆虫班に 6 名の参加者を集め,実施した. なお自然公園法では,国立公園のうち特別保 護区以外では,昆虫の採集に関して許可を必要と していない.今回の調査は島の所有者である城山 観光株式会社に許可を得て行われた.