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平島における魚類相調査で確認されたトカラ列島記録のハタ科魚類4種

中村潤平・本村浩之

Abstract / Introduction / Summary:

トカラ列島は屋久島と奄美大島の間に位置し,7つの有人島(口之島,中之島,諏訪之瀬島,平島,悪石島,小宝島,および宝島)と5つの無人島(臥蛇島,小臥蛇島,小島,上ノ根島,および横当島)から構成され,トカラ列島が属する鹿児島郡十島村の行政区域の長さは162 kmにおよぶ(長嶋ほか,2009).その中間に位置する平島(Fig. 1)は面積2.08 km2,周囲4.5 km,最高高度243 mの古期火山列島のひとつであり,人口はおよそ70人である(長嶋ほか,2009;加藤,2013;鹿児島県,2020).本研究以前の平島における魚類の報告は多くないものの,平島産の標本に基づきアオスミヤキEpinnula pacifica Ho, Motomura, Hata and Jiang, 2017が新種記載され,2016年に鹿児島大学総合研究博物館により行われた平島の魚類相調査では日本初記録のハナサキタナバタメギスPseudoplesiops immaculatus Gill and Edwards, 2002や世界3個体目のヒゲモジャオコゼCocotropus possi Imamura and Shinohara, 2008が採集され報告された(Ho et al., 2017;Koeda et al., 2017;小枝・本村,2018;Motomura, 2020). 第一著者は2018年5月から2020年3月にかけて平島における魚類相調査を島民の方々のご協力のもとで行った.本調査の過程で採集された魚類の一部はすでに報告されており[ネコザメHeterodontus japonicus Miklouho-Maclay and Macleay, 1884:中村・本村,2019;カガミダイZenopsis nebulosa (Temminck and Schlegel, 1845):伊藤・本村,2019;ヒゲニジギンポMeiacanthus grammistes (Valenciennes, 1836):森下・本村,2019],ここでは本調査で得られた魚類のうち,トカラ列島から初めて記録された4種のハタ科魚類を報告する.