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奄美大島から得られた琉球列島初記録の黒褐色を呈するハモ

上城拓也・前川隆則・本村浩之

Abstract / Introduction / Summary:

ハモ科Muraenesocidaeは紅海を含むインド洋および西太平洋の温帯から熱帯域に広く分布し,日本近海からは2属4種が知られている(波戸岡,2013).そのうちハモMuraenesox cinereus (Forsskål, 1775)は日本国内においてTemminck and Schlegel (1846)により長崎県産の標本をもとに初めて報告され,その後,青森県,新潟県から薩摩半島西岸にかけての日本海・東シナ海沿岸,瀬戸内海,福島県から大隅半島東岸にかけての太平洋沿岸,および東シナ海大陸棚から記録されていた(波戸岡,2013;公益財団法人鹿児島市水族館公社,2018;小枝,2018). 2019年3月に鹿児島県奄美大島近海において2個体のハモが採集された.本標本は琉球列島における本種の標本に基づく初めての記録となるため,ここに報告する.なお,本研究の課程で,鹿児島湾産のハモ1標本(KAUM–I. 55882,全長838.0 mm)も比較標本として調査した.この標本は本種の鹿児島湾からの標本に基づく初めての記録となる.