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鹿児島県いちき串木野市大里川河口干潟におけるウミニナのサイズ組成および微細内部成長線分析

水元 嶺・永田祐樹・冨山清升

Abstract / Introduction / Summary:

本研究では,鹿児島県いちき串木野市大里川河口干潟に生息する腹足類,ウミニナBatillaria multiformisにおけるサイズ頻度分布および性比の季節変化を調査し,生活史を明らかにすることを試みた.さらに,貝殻内部成長線分析による年齢査定の可能性を検討した.3月を除き,年間を通して,殻高23–25 mmにサイズピ-クを持っていた.潮間帯を上部(石積護岸)と下部(砂泥底)に区分して採集を行った結果,小さな個体は下部に,大きな個体は上部に分布する傾向が見られた.卵を持つ雌個体は確認されたが,精子を持つ個体は1個体も確認できなかった.滑層瘤切断面における内部成長線レプリカの観察によって,ある程度の精度であれば,微細内部成長線を観察・計測することができた.この成長線が潮汐周期によって形成されると仮定して,滑層瘤の形成開始からの経過時間を算出した結果,分析した個体は6年1か月が経過していると大まかに予想された.内部成長線分析を年齢査定に適用するには,分析処理と観察手法においてなお大きな改善が必要であることは明らかであるものの,本研究において,微細内部成長線分析の可能性が示されたことは,内部成長線分析による巻貝の年齢査定の実現するうえで重要な一歩であるといえるだろう.