/ 045-047

いちき串木野市の大里川干潟におけるタマキビガイ3 種の生活史,および精子の集団遊泳の観察記録

永田祐樹・水元 嶺・冨山清升

Abstract / Introduction / Summary:

潮間帯とは,潮の干満により水没と乾燥を繰り返す場所で,温度,湿度,塩分,光量などの環境条件の変化が急激で大きく,それに耐性を有する生物からなる独自の生物群集が成立する.本研究では,鹿児島県いちき串木野市大里川河口の潮間帯において,タマキビガイ3種の殻高サイズ頻度分布の季節変動を追うことにより,各々どのような生活史を持つ種であるかを目的とした.本研究の調査対象は,タマキビ科LittorinidaeのタマキビLittorina brevicula (Philippi, 1844),アラレタマキビNodilittorina radiate (Souleyet in Eydoux & Souleyet, 1852),ヒメウズラタマキビLittoraria intermedia (Philippi, 1846)の3種である.2017年12月から2018年11月までの毎月1回,大潮または中潮の日中の干潮時刻前後に大里川河口の潮間帯上部に位置する石積護岸で調査を行った.毎月各々約50個体を見つけ取りにて採取した.その後,研究室に持ち帰り,冷凍し乾燥させた後,殻高・殻幅(mm)のサイズ測定を行い,記録した.ヒメウズラタマキビに関しては,生殖腺の観察も同時に行った.サイズ頻度分布から,3種のうち,タマキビに関しては,6月から8月の夏季に新たな個体が新規加入したと考えられるが,残りの2種に関しては,1年を通してほとんど一定であった.これは,採取の際に個体のサイズが偏ったことやサイズによって生息地が異なる傾向があるといったことが考えられる.生殖腺観察では,卵子は夏季を除く9ヶ月間で,精子は5月から7月の個体から観察できたため,夏季に繁殖活動を行っていると考えられる.このことから,ヒメウズラタマキビにおいても,夏季に新たな個体の新規加入があると推測することが出来る.