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奄美大島から得られた絶滅危惧種カンムリブダイ

畑 晴陵・前川隆則・本村浩之

Abstract / Introduction / Summary:

ブダイ科魚類カンムリブダイBolbometopon muricatum (Valenciennes, 1840)は本科魚類の最大種であり,体長95 cm以上に達する(Bellwood, 2001;荻原ほか,2010).カンムリブダイの日本国内における記録は少なく,これまで沖縄県と鹿児島県南さつま市笠沙町からのみ記録されている(荻原ほか,2010;三浦,2012;島田,2013;宮古島毎日新聞,2018).本種は魚類としては極めて珍しく,生きたサンゴを主な餌とし(岸本,1997;岩尾,2010),サンゴ礁の消失や海底のサンゴ被度の低下がカンムリブダイの個体数に大きく負の影響を及ぼすことが懸念されており(荻原ほか,2010),2017年に環境省版海洋魚類レッドリストにおいて絶滅危惧IB類に指定された.その一方で,沖縄県北部における本種の分布が疑問視されているなど(島田,2013),本種の分布域に関しては不明な点が多かった. 奄美群島における魚類相調査の過程で,2018年,2個体のカンムリブダイが奄美大島近海において漁獲された.本種の沖縄県以外における日本国内の報告例は荻原ほか(2010)が鹿児島県南さつま市笠沙産の1個体を報告したものに限られ,奄美大島産の2個体は薩南諸島におけるカンムリブダイの初めての記録となるため,ここに報告すると同時に,本種の琉球列島における分布記録に関しても,考察をおこなった.