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奄美大島から得られたリュウグウノツカイ

畑 晴陵・藤井琢磨・本村浩之

Abstract / Introduction / Summary:

リュウグウノツカイRegalecus russellii (Cuvier, 1816)は体長5.5 m以上に成長する,アカマンボウ目リュウグウノツカイ科リュウグウノツカイ属の1種である.リュウグウノツカイ属魚類は長らく分類学的に混乱していたが,Roberts (2012)により詳細な分類学的検討がなされ,リュウグウノツカイR. russelliiRegalecus glesne Ascanius, 1772の少なくとも2種が含まれることが明らかにされている.リュウグウノツカイは主に沖合の中深層に生息するが(Roberts, 2012;林,2013),稀に沿岸域で漁獲される,海岸に打ち上げられるなどすることがあり,そうした際にはその大きさや独特の外見により新聞などに取り上げられることも多い(例えば田中,2002;読売新聞,2016).しかし,リュウグウノツカイの日本における記録は多く,北海道から九州南岸にかけての太平洋,日本海・東シナ海沿岸,および琉球列島の広域から報告されている(林,2013). 2018年4月23日,奄美大島の瀬戸内町久慈近海の水面直下においてリュウグウノツカイ1個体が採集された.本種は鹿児島県においても多数記録されているが,そのほとんどは県本土からのものであり,本標本は薩南諸島におけるリュウグウノツカイの標本に基づく初めての記録となるため,ここに報告する.