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屋久島におけるトラギス属魚類2 種の記録

荒木萌里・高久 至・本村浩之

Abstract / Introduction / Summary:

トラギス科トラギス属魚類Parapercisは体が円筒形で,尾柄部が後方に向かうにつれて側扁する,両顎前部に後方に反った犬歯状歯が1列あり,その後に絨毛状歯が続く,主鰓蓋骨に1本の鋭い棘をもつ,背鰭棘数が4–5であり,棘部と軟条部が鰭膜で連続する,胸鰭が14–21軟条であることなどによって特徴づけられる(Imamura and Yoshino, 2007; Randall et al., 2008).本属魚類はこれまでに日本近海からは28種が知られている(日比野ほか,2013;島田,2013;Nakayama et el., 2016; 松尾ほか,2018). 屋久島における魚類相調査の過程で2018年6月12日に1個体のサンゴトラギスParapercis multiplicata Randall, 1984が採集された.また,2018年6月11日に屋久島の一湊沖水深20 mにおいてトラギスParapercis pulchella (Temminck and Schlegel, 1843)の水中写真が撮影された.サンゴトラギスの屋久島からの記録はこれまで水中写真のみであり(吉野,2008;Motomura et al., 2010),本標本は屋久島からの標本に基づく初めての記録である.また,トラギスの水中写真は琉球列島における本種の初めての記録であり,これまで鹿児島県本土より南からの報告がないことから,本種の日本国内における分布の南限を更新するものとなるためここに報告する.