鹿児島県から得られたカラチョウザメの形態学的 ・ 生態学的知見

チョウザメ科魚類の1種,カラチョウザメAcipense sinensis Gray, 1835は体重560 kgに達し,本科魚類の最大種として知られ,長江をおもな産卵河川とした遡河回遊魚である(倪,1990).本種は日本近海には迷魚として極めて稀に出現する(細谷,2013).長江における環境開発,乱獲により個体数が激減しており(倪,1990),IUCNのレッドリストにおいては“CR(絶滅寸前)”に位置づけられている(Qiwei, 2010).1991年には観賞魚として生体が日本に輸入されたこともあったようであるが(松坂,1997),1998年にワシントン条約付属書II類にリストされ,現在は輸出入が規制されている.その稀少さから中国では「泳ぐパンダ」や「水中のジャイアントパンダ」などと称されることもある(どうぶつのくに編集部,2017;畑,2017). 1997年5月17日,鹿児島県薩摩半島南端に位置する開聞岳の近海で,1個体のカラチョウザメが定置網により漁獲された.その後,いおワールドかごしま水族館により同個体の飼育が始められた.当初,約9ヶ月にわたって全く摂餌をおこなわなかったものの,その後餌を食べ始め(出羽,1998;中畑,2008;財団法人鹿児島市水族館公社,2008),日本国内の水族館においては初めて,本種の餌付けに成功した(白濱,2000).その後,10年以上の長きにわたり,同水族館において飼育がなされ,来館者の人気を集めたが,2011年9月4日に死亡が確認された.飼育期間14年110日は,カラチョウザメの日本国内における最長飼育記録である(中畑,2011).同個体はその後,標本として鹿児島大学総合研究博物館に収蔵され,標本写真が畑(2017)により示された.日本産カラチョウザメの記録は極めて少なく,形態学的知見の蓄積のため,ここに報告する.