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ヘビギンポ科ヒメギンポの鹿児島県における分布状況と性的二型に関する形態学的知見

田代郷国・本村浩之

Abstract / Introduction / Summary:

ヘ ビ ギ ン ポ 科 ヒ メ ギ ン ポ 属(Tripterygiidae: Springerichthys Shen, 1994)は,第 1 背鰭棘数が 3, 臀鰭棘数が 2,側線が 2 本で,側線鱗列は前方が 有孔鱗,後方が欠刻鱗からなる,頭部,腹部,お よび胸鰭基底前方が無鱗であることなどから特徴 づけられ(Shen, 1994; Fricke, 1997),西太平洋か らヒメギンポ Springerichthys bapturus (Jordan and Snyder, 1902) と S. kulbickii (Fricke and Randall, 1994) の 2 種 が 認 め ら れ て い る(Fricke, 1997). そのうち国内にはヒメギンポ S. bapturus のみが 分布し,北海道南部から九州南岸にかけて報告さ れている(Fricke, 1997;林,2013). 鹿児島県における魚類相調査の過程で甑島列 島中甑島と上甑島,薩摩半島坊津,および大隅諸 島種子島からヒメギンポに同定される 9 個体(体 長 27.3–52.6 mm)が採集された.本研究では本 種の国内分布南限域である鹿児島県における分布 情報の蓄積のため,これらの標本を記載し,ここ に報告する.なお,種子島産の個体はヒメギンポ の大隅諸島における初記録であると同時に国内に おける南限記録である.また,本種の形態におけ る性的二型について,鹿児島県外産の標本を含め て検討を行ったところ,新たな知見が得られたた め合わせて報告する. 材料と方法 計数・体各部の計測は Fricke (1997) に従った. 下顎の感覚管開口数の表記は Hansen (1986) に 従った.標準体長は体長または SL と表記した. 標本の作製,登録,撮影,および固定方法は本村 (2009)に準拠した.体色の記載は上甑島産の 2 個体(KAUM–I. 89740, 89471)と種子島産(KAUM– I. 61824)の 1 個体の生鮮時のカラー写真に基づ く.本報告に用いた研究機関略号は以下の通り: CMNH(千葉県立中央博物館分館 海の博物館); KAUM(鹿児島大学総合研究博物館)