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トビウオ科魚類シロフチトビウオとチャバネトビウオの鹿児島県本土からの初記録

藤原恭司・伊東正英・岩坪洸樹・本村浩之

Abstract / Introduction / Summary:

トビウオ科 Exocoetidae は日本国内からハマト ビウオ属 Cypselurus,オキトビ属 Danichthys,イ ダテントビウオ属 Exocoetus,ニノジトビウオ属 Hirundichthys,サヨリトビウオ属 Oxyporhamphus, ツマリトビウオ属 Parexocoetus,およびダルマト ビ属 Prognichthys の 7 属が知られており,31 種が 記録されている(藍澤・土居内,2013).このうち, ハマトビウオ属 Cypselurus は,側線に胸部分枝が ない,胸鰭が長く,その後端は臀鰭基底後端に達 する,腹鰭が長く,畳んだ後端は臀鰭起部を越え る,臀鰭起部が背鰭第 3 軟条基部直下または後方 に位置する,背鰭軟条が臀鰭軟条より 2–5 本多い, および胸鰭軟条の上部 2–3 本が不分枝であること などの特徴をもち,日本産トビウオ科魚類 31 種 のうち 19 種が本属に含まれる(藍澤・土居内, 2013). 2015 年 6 月 23 日に鹿児島県枕崎市から 1 個体 のハマトビウオ属魚類が第 3 著者の岩坪らによっ て採集された.この標本(KAUM–I. 200113,体 長 272.7 mm)を精査したところ,計数形質や色 彩 な ど か ら チ ャ バ ネ ト ビ ウ オ Cypselurus spilonotopterus (Bleeker, 1865) に同定された. 畑・本村(2014)は鹿児島県肝属郡肝付町内之浦 湾から得られた 1 標本(KAUM–I. 56768,体長 89.3 mm)に基づき,チャバネトビウオ C. spilonotopterus を鹿児島県本土から初めて報告した.しかし,本 研究で同標本を再検討したところ彼らの報告した チャバネトビウオはアリアケトビウオ C. starksi Abe, 1953 の誤同定であることが明らかになった. したがって,枕崎市産 C. spilonotopterus の標本は 鹿児島県本土からの初記録になる. また,トビウオ科魚類の標本調査の過程で,鹿 児島県南さつま市笠沙町から得られた 5 個体のシ ロフチトビウオ Cypselurus furcatus (Mitchill, 1815) に同定される標本がみつかった.現在,鹿児島県 における C. furcatus の記録は屋久島のみであるた め(Motomura et al., 2010;藍澤・土居内,2013; Motomura and Harazaki, 2017),シロフチトビウオ C. furcatus も鹿児島本土からの初記録としてここ に報告する.