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鹿児島県薩摩半島南部における陸産貝類の分布

竹平志穂・今村隼人・坂井礼子・中山弘章・鮒田理人・冨山清升

Abstract / Introduction / Summary:

日本列島の南西端に位置する鹿児島県では,こ れまで離島の多くで陸産貝類の分布調査の研究が 行われてきたが,県本土での詳しい生物地理学的 な分布調査の研究はほとんど行われていない.そ こで本研究は薩摩半島南部に焦点を当て,11 地 点での分布調査を行い,陸産貝類相を明らかにす ることを目的とした.調査は見つけ取りと土をふ るう手法を用いて行い,必要な処理を行った後, 同定,データ処理をし,まとめた. 調査の結果,鹿児島県薩摩半島南部に設置し た 11 地点において,11 科 26 属 34 種の合計 694 個体の陸産貝類を採集した.最も多くの種がみつ かったのは南さつま地域で 22 種,最も少なかっ たのは坊津地域で 4 種のみだった.5 地点以上で 出現した種は 9 種であったが,1 地点でのみ出現 した種は 15 種であった. 今回の調査結果から,11 地点中 10 地点で見ら れたアズキガイ Pupinella (Pupinopsis) rufa とタカ チホマイマイタカチホマイマイ Euhadra herklotsi nesiotica は南薩地域でのほとんどで生息している 広い分布様式を持つ種と考えられる.また,最も 種が見られた南さつま地域のような,ある程度人 の手が入りやすい民家付近で陸産貝類は多く見つ かり,反対に最も種数が少なかった坊津地域のよ うな,人の手が入らない山の中や海に近い乾燥し た土壌であるところではあまりみられない.しか し,類似性の面では,全地点間での類似性にあま り違いはない.また,希少性の面では,喜入北部, 南さつま,鹿児島市福元町地域の点数が高く,絶 滅危惧種の生息可能な地域と考えられる.今後は, もっと範囲を限定し,環境や植生などにも着目し た分布調査を行っていく必要がある.