Abstract / Introduction / Summary:
干潟とは川から運ばれた砂泥が堆積してできた 地形で,波浪が少なく潮の満ち引きが大きい内湾 などに形成される.そこに棲むさまざまな種の動 物が,有機物の除去や生態系内の物質循環に関し て重要なはたらきを担っており,干潟のエコトー ンとしての機能を支えている(菊池,1993).し かし,1940 年代から 90 年代にかけて干拓や埋め 立てなどで日本の約 40% の干潟が消失し(環境 省自然保護局,1994),干潟生物のもつこのよう な機能の劣化が懸念される. 底生生物相が変化する要因としては,主に干潟 における富栄養化やそれに伴う貧酸素化,餌の減 少等,底質中の環境や水質に関わるものだけでな く,河川や沿岸の流れがもたらす地形や堆積環境 の変化など物理的な要因も考えられる.後者に関 する研究は多くないが,鹿児島湾奥の干潟におい ては,1977 年から 2003 年にかけて,面積が約 200 ha から約 60 ha に減少しており(山本・小玉, 2009),地形の変化に伴う環境変化が底生生物相 に影響を与えている事が予測されている. 調査地である鹿児島県姶良市平松の重富干潟 は,思川の河口,南北 1.5 km にわたって広がる 河口・前浜干潟が組み合わさって形成されており, 鹿児島湾内の干潟では最大のものである.しかし, 重富干潟でも周囲の海岸線の埋め立てが進んでお り,干潟の環境変化が著しいと考えられる.そこ で,松下(1995)および桝屋(2006)と今回の調 査(2012)との比較から,底生生物相と生息環境 の変化を明らかにすることを目的とした.