鹿児島県南薩地域の海産固着性貝類・付着性貝類の分布

鹿児島県の南薩地域は九州の南西端にあた り,その海岸線の多くは岩礁帯から成り立ってい る.そのため多くの種類の海産固着性貝類・付着 性貝類が生息することが予想されるが,その分布 についての詳しい研究はほとんど行われていな い.特に笠沙から坊津にかけては急峻な山並みが 沈水して出来たリアス式海岸が形成されており, 調査の手が入りにくい地形となっている.そこで 本研究では笠沙町,坊津町,枕崎市,知覧町,頴 娃町,山川町という6 つの地点を定め,南薩地域 の海産固着性貝類・付着性貝類の分布調査を行っ た. 調査は,笠沙町,坊津町,枕崎市,知覧町,頴 娃町,山川町の6 つの地点の海産固着性貝類・付 着性貝類を,2013 年1 月から7 月の間,月に1 回, 大潮の日の干潮前後に調査地に行き,約2 時間見 つけ捕り採集を行った.採集する数は同定に必要 と考えられる必要最小限の数とした.採集したサ ンプルは茹でて肉抜きした後,水道水で洗い,乾 燥機で一週間程乾燥させ,同定を行った. 調査の結果,笠沙町では 9 科12 種,坊津町で は11 科16 種,枕崎市では10 科14 種,知覧町で は14 科22 種,頴娃町では10 科13 種,山川町で は15 科23 種を確認した.6 地点の合計としては 22 科48 種を確認した.アッキガイ科やニシキウ ズ科,ヨメガカサ科のように6 地点全てで確認出 来た科もあれば,1 つの地点のみでしか確認でき ない科もいくつかみられた. この調査結果を基にSimpson の多様度指数を用 いて各調査地の海産固着性貝類・付着性貝類の多 様度を求めた.その結果,笠沙町で最も高く(最 も複雑な群集),山川町で最も低い値(最も単純 な群集)となった.笠沙町の多様度指数が高い理 由としては,一つ目に笠沙町の調査地がリアス式 海岸を形成しているため人のアプローチが少なく 海岸生態系の撹乱があまりないこと,二つ目に笠 沙町が黒潮海流の影響を強く受ける場所であるこ とが考えられる.山川町の多様度指数が低い理由 としては,調査地が長崎鼻付近ということで,観 光客が多く,貝類の採取等によって海岸の自然が 乱されていることが考えられる.さらに地点間の 群集の類似度を野村・シンプソン指数を用いて求 め,類似デンドログラムを作成した.その結果, 類似度は知覧― 頴娃間が最も高かった.これは 知覧と頴娃の調査地が,阿多溶結凝灰岩が侵食さ れ出来た岩礁帯という共通の地形的特長をもって いることが大きな理由だと考えられる.次に類似 度が高かった笠沙― 坊津間もリアス式海岸中の 岩礁と転石が混じりあった似た地形同士だったこ とから,群集の類似度には海岸地形が大きく関係 していることが考察される.