外来植物は,侵入先の生態系を脅かす事例が 世界各地で数々報告されており,特に近年は急速 に拡大・活発化する人やモノの移動に伴って増加 傾向にある. 2010 年 10 月に名古屋で開催された生物多様性 条約第 10 回締約国会議では,「2020 年までに侵 略的外来種とその定着経路を特定し,優先度の高 い種を制御・根絶すること」等を掲げた愛知目標 が採択された.鹿児島県においても,この流れに 沿って 2019 年 4 月に「指定外来動植物による鹿 児島の生態系に係る被害の防止に関する条例」が 施行され,同 10 月には「指定外来動植物被害防 止基本方針」が策定されるなど,貴重な生態系を 保全するための取り組みは着々と進展している. その一方で,日本の中で植物多様性が極めて 高い鹿児島県においては,地域内に生育する植物 相の基礎的知見が十分とは言い難い.外来植物の 被害防止のためには,移入阻止や駆除等の適切な 対策を講じる必要があるが,そのためには外来植 物の自生情報や生態に関する知見を積み重ね,正 しく理解しておかねばならない. 今回の報告では,鹿児島県内の地域でこれま でに記録がなかったイネ科ヨシススキ Erianthus arundinaceus (Retz.) Jeswiet とキンチャクソウ科サ ケバキンチャクソウ(新称)Calceolaria tripartita Ruiz & Pav. の帰化情報について新知見を報告す る. 植物標本は,同定の検証やラベルから分布や 開花期情報を読み取る,また近年は DNA 解析に も用いられる等,科学的根拠として重要である. 今回の報告で得た証拠標本は鹿児島大学総合研究 博物館植物標本室(KAG)に収蔵した[標本デー タ ベ ー ス(https://www.museum.kagoshima-u.ac.jp/ hyouhonsitu.html)にて閲覧可能].

鹿児島県の外来植物 I : ヨシススキとキンチャクソウ属の 1 種サケバキンチャクソウ (新称)(田金秀一郎・丸野勝敏・中川優花里・宮本旬子)