/ 046-016

鹿児島県薩摩半島南岸から得られたミナミサルハゼとカマヒレマツゲハゼの記録 (ハゼ科:サルハゼ属) および両種の生息環境に関する新知見

古𣘺龍星・是枝伶旺・赤池貴大・本村浩之

Abstract / Introduction / Summary:

ハゼ科ゴビオネルス亜科サルハゼ属Oxyurichthys Bleeker, 1857は先端が二叉した幅広い第3神経棘をもつ,頭部の前眼肩甲管に開孔A’,B,C,D(S),F,H’がある,および上顎の歯列が一列であること[Oxyurichthys keiensis (Smith, 1938)を除く]などの特徴をもち,インド・太平洋から16有効種が知られている(Pezold and Larson, 2015).しかし,本属は分類学的問題を多く抱えており,日本産サルハゼ属魚類の分類の現状をまとめた渋川ほか(2017)は1未記載種,1未同定種,および2日本未記録種を含む14種を報告している. 2018年6月から11月にかけて鹿児島県南九州市頴娃町からサルハゼ属魚類が採集され,標本作成を行った9個体を精査した結果,2個体がミナミサルハゼOxyurichthys lonchotus (Jenkins, 1903),7個体がカマヒレマツゲハゼ Oxyurichthys cornutus McCulloch and Waite, 1918に同定された.日本国内においてこれまで前者は千葉県から宮崎県にかけての太平洋沿岸,小笠原諸島,および琉球列島から,後者は静岡県,和歌山県,徳島県,大分県,および琉球列島から知られていた(立川・宮島,2012;明仁ほか,2013;吉郷,2014;国土交通省四国地方整備局那賀川河川事務所,2017;山川ほか,2018;村瀬ほか,2019).その後,薩摩半島西岸からマツゲハゼOxyurichthys ophthalmonema Bleeker, 1856として報告されていた標本写真が本研究によってカマヒレマツゲハゼに同定された.したがって,鹿児島県薩摩半島南岸から得られたミナミサルハゼとカマヒレマツゲハゼは鹿児島県本土初記録となるため,ここに報告する.さらに,両種の生態学知見について考察を行った.