近年,地熱エネルギーの開発に伴い地熱水(熱 水,温泉水など)中に含まれる各種成分が環境問 題との関連において注目されている.ヒ素,アン チモンおよび水銀などもその中に入る.それらの 濃度,存在形態,分布などに関する情報は十分で はない. ヒ素は有害物質の一つであり地熱開発に伴う 公共水域への温排水の排出基準 0.1 mg/l(100μg/l) を解決する手段として還元井を掘削し,地下還元 が広く行われている.また,高濃度のヒ素を除去 するための除去技術の研究も行われてきた(増子・ 渋田,1976;坂元ほか,2000). ヒ素と挙動を共にすることが考えられるアン チモンは,その濃度はヒ素に比較して低く,分析 の困難さもありその報告は少ない. 1969 年 Holak(Holak, 1969)がヒ素の水素化物 ― 原子吸光光度法を開発し,山本らにより ppb- ppt (μg/l-ng/l) レベルのヒ素,アンチモンの分析が 可能となった(Yamamoto et al., 1981; Sakamoto et al., 1988; Ozaki et al., 2004). 水銀はヒ素やアンチモンに比べてその濃度は 低く分析は困難であった.しかし,水銀が気化し 易いことや熱によって分解して水銀蒸気を発生す る性質を利用した新しい分析法が開発された.水 銀を還元気化して冷原子吸光光度や還元または加 熱気化した水銀蒸気を金などとアマルガムをつく らせて濃縮し,その後で加熱気化 ― 冷原子吸光 光度で測定する方法が広く用いられている(坂元・ 鎌田,1981;Sakamoto et al., 1997). 日本の酸性温泉水中のヒ素,鉛濃度について は,南らの報告がある(南ほか,1958).また, 水銀濃度については,中川(1974, 1982)や粟屋 ほか(1967)の報告がある.地熱開発に伴って地 熱 地 帯 か ら 流 出 す る 地 熱 水 中 の ヒ 素( 輿 良, 1979),アンチモンおよび水銀濃度は測定されて はいるが,その結果が公表されることは少ない. 本研究は,南九州の地熱地帯(温泉を含む)か ら採取した地熱水(熱水,温泉)中のヒ素,アン チモンおよび水銀濃度を測定した.それらの成分 の濃度,存在形態,相互の関係,分布などについ て詳述する. なお,具体的な調査地点の名称は個人情報保 護法等の関係から地域名だけに留めることにす る.また,本研究の調査期間は 1981 年 11 月から 2006 年 1 月までの地熱水(熱水,温泉)中のヒ素, アンチモンおよび水銀等の調査結果である.それ らの結果を報告する.

南九州地熱水中のヒ素,アンチモンおよび水銀濃度の化学的研究(坂元隼雄)