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スナガニOcypode stimpsoni Ortmannの警戒距離と警戒解除時間

黒江修一

Abstract / Introduction / Summary:

スナガニ Ocypode stimpsoni Ortmann は,外洋に 面した砂浜の高潮線上部に深さ 20–30 cm の巣穴 を掘って生活する(三宅,1983).眼柄が太く, 発達した眼と脚をもつので,ヒトやシギ・チドリ などの天敵が近づくと慌てて巣穴に隠れ,動く物 体が遠ざかるまで巣穴の中にじっと潜む.安心す ると,やがて巣穴から姿を現し活動を再開する(図 1).スナガニ科の仲間でも警戒心が特に強いと いわれるスナガニは,一体どれくらいの距離まで ヒトが近づくと警戒して巣穴に戻るのか,また, 警戒心を解いたスナガニが活動を再開するまでに どれくらいの時間を要するのか併せて調べてみ た.今回の調査で,スナガニ個体群の警戒行動に ついてその一部を明らかにすることができたので 報告する. なお,「警戒距離」は,「動く物体(筆者)を 発見したスナガニが警戒して巣穴に戻る行動を起 こした地点と,そのときの動く物体までの直線距 離」とした.また,「警戒解除時間」は,「活動し ていたスナガニが,動く物体を発見し慌てて巣穴 に戻る行動を始めた時刻から,一定時間巣穴に身 を潜めた後,動く物体の気配がなくなったことを 察して,巣穴から出て周囲の様子を伺いながら, 再び採餌等の活動を始める時刻までの経過時間」 とした.