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鹿児島湾のニッポンウミシダ上に棲息するウミシダヤドリエビに超寄生するエビヤドリムシ類の記録

三浦知之

Abstract / Introduction / Summary:

宮崎県の沿岸域を中心に甲殻類に寄生するエ ビヤドリムシ上科等脚類を調査しているが(三浦 ほか,2014),かつて鹿児島湾で採集した甲殻類 からも日本未記録のエビヤドリムシ類を見いだし たので,報告する. 等脚目ウエノエ亜目エビヤドリムシ上科 Bopyroidea Rafinesque, 1815 は,世界で 600 種以 上が知られ,比較的大型の十脚甲殻類から小型の 貝形類まで,底生 ・ 遊泳性を問わず,多様な宿主 に寄生し(WoRMS Editorial Board, 2013; An et al., 2009),その鰓腔内に入り込むか,腹部などの外 面に付着し,宿主の寄生部位が大きく変形するこ とも多く,漁獲対象種のエビ類では商品価値を下 げることもある.日本は戦前から椎野による研究 がなされ,世界で最も本動物群の分類 ・ 生態研究 が進展している海域と言える(Shiino, 1933– ほか; 齋藤,2002).エビヤドリムシ類は他生物に寄生・ 共生する甲殻類にも寄生するため,超寄生者 hyperparasite となることがある.本報告もその一 例である. 鹿児島湾および奄美大島のウミシダ類と共生 する生物に関しては,すでに報告したが(三浦, 2012),その補足として桜島袴腰海岸のニッポン ウミシダに共生するウミシダヤドリエビの鰓腔に 超寄生するエビヤドリムシ類を紹介する.なお, 調査方法等は三浦(2012)に詳細があり,本稿で は材料の説明に簡潔に示すのみにした. 等脚目甲殻類 Isopoda Latreille, 1817 については 上位分類の体系に複数の考え方があり,まだ議論 の途上にあることから,本論文では,旧エビヤド リ ム シ 亜 目 Epicaridea Latreille, 1831 を World Register of Marine Species (WoRMS) のサイトで使 用されている仮の分類体系に従って (WoRMS Editorial Board, 2014), エ ビ ヤ ド リ ム シ 上 科 Bopyroidea Rafinesque, 1815 として扱う.このグ ループには 5 科があり,エビヤドリムシ科 Bopyridae Rafinesque, 1815 も含まれている.エビ ヤドリムシ科はさらに 8 亜科に分かれ,本報告で はその 1 亜科 Hemiarthrinae に属す未同定種を報 告する.なお,標本は宮崎大学農学部(MUFS) に保管されている.