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屋久島から得られたハタ科魚類ヤマトトゲメギスAporops bilinearisの分類学的再検討

吉田朋弘・本村浩之

Abstract / Introduction / Summary:

ハタ科 Serranidae は日本近海に 34 属 136 種が 分 布 し て お り( 岡 本 ほ か,2012;Endo and Kenmotsu, 2013;瀬能,2013, 2014),ヤマトトゲ メギス属 Aporops にはヤマトトゲメギス Aporops bilinearis Schultz, 1943 のみが含まれる. Aporops bilinearis Schultz, 1943 はフェニックス 諸島とアメリカンサモアから得られた標本に基づ き新種記載された(Randall and Baldwin, 1997). Kamohara (1957) は喜界島産の標本 1 個体に基づ き Aporops japonicus を新種記載すると同時に,本 種に対して新標準和名ヤマトトゲメギスを提唱し た.その後,Kamohara and Yamakawa (1968) は喜 界島産の 3 標本に基づき,A. bilinearis を日本初 記録として報告し,同時に本種に対してナンヨウ トゲメギスを提唱した.その後,A. japonicus は A. bilinearis の新参異名とされ(Randall and Baldwin, 1997),現在は先に提唱された和名ヤマトトゲメ ギ ス が 標 準 和 名 と し て 扱 わ れ て い る( 瀬 能, 2000).ヤマトトゲメギス A. bilinearis は国内にお いて,南鳥島,奄美大島,喜界島,南大東島およ び石垣島に出現するとされている(瀬能,2013). 2005 年 10 月 28 日に大隅諸島屋久島一湊沖に おいて,ヤマトトゲメギス属と同定される 1 個体 が採集された.本標本は色彩や体型が典型的なヤ マトトゲメギス A. bilinearis と異なることから,A. bilinearis のタイプ標本や分布域広域から得られ た一般標本と比較検討を行った.その結果,屋久 島の標本はヤマトトゲメギスの種内変異内に含ま れることが明らかになった.この標本はヤマトト ゲメギスの分布の北限更新記録となるため,ここ に記載し,報告する.また,本種と近縁属の体側 鱗の比較を行った.