サトセナガアナバチ Ampulex dissector (Thun- berg, 1822) は全身に青藍色の金属光沢を帯び,後 脚が赤~緋色をした美しい中型のアナバチである (図 1).本種の地理的分布は須田(2011)に詳し く書かれているので,その詳細については割愛し, ここでは概要を述べる.国外では,朝鮮,中国, 台湾から記録されている(Yasumatsu, 1936).なお, 本研究において山根正気コレクションに所蔵され ていた台湾産 1♂ 標本と,今回得られた屋久島産 標本を外部形態の比較観察を行ったところ,両者 には全く相違が確認されなかった. 日本列島における本種の確実な記録は,本州 (関東以西),四国,対馬,九州,南西諸島(種子 島のみ)からのみである.「琉球」と書かれた古 い分布記録も存在するが,この記録は幾分疑わし い(山根,1999).この記録が本当であったにせよ, 今回焦点を当てる屋久島が,当時の「琉球」には 含まれていないと考えられている.当時は「琉球」 といえば「沖縄以南」を指す語であったと思われ る.寺山・田埜(2006)に「屋久島」という本種 の分布記録がみられるが,これは「種子島」の間 違いである(寺山 守氏,私信). 今回,筆者らは屋久島においてサトセナガア ナバチの分布を確認することができた.屋久島か らは初記録であり,日本における信頼に足る本種 の分布記録の中では最も南に位置することにな る.なお,鹿児島県において本種が採集されたの はおよそ 20 年ぶりである.

サトセナガアナバチ Ampulex dissector (Thunberg) の 屋久島からの初記録(河野太祐・前田拓哉)