鳥類の繁殖生態についての情報は,自然環境の 保全という課題に応えるため極めて重要であり, 基礎資料としても必要である.特に,地域別の繁 殖状況や繁殖の有無に関する現状把握のための確 認調査は,広い意味での「鳥類の保護」に通ずる ものがある. 鳥類の繁殖生態についての主な論文は,一般記 載として黒田 (1969),清棲 (1978),鮫島 (1996), 所崎ら (1999) があり,特に繁殖生態についての 詳細な記載は,環境庁 (1981 年 ),高ら (1997), 柿澤ら (1999),小海途ら (2003) がある.繁殖の 時期・営巣環境・育雛期間,巣・卵・雛の形態は ほとんどの種で明らかにされている.しかし,地 域別の詳細な情報は少なく,さらに島嶼別での確 認事例は断片的である. 今回,鹿児島県の沖永良部島で 2 年間滞在する 機会を得,鳥類の繁殖状況を観察・確認した.本 報告では可能な範囲内での確実な記録として,絶 滅危惧種に指定されているツミ・ミフウズラ・ヒ クイナ・セイタカシギの 4 種を含む 19 種の繁殖 鳥類が確認された.沖永良部島で繁殖する鳥類に ついて生態写真を添えてここに報告する. 材料と方法 調査期間は,2008 年 4 月~ 2010 年 3 月までの 2 年間である.調査範囲は沖永良部島全域とした. 今回の調査における繁殖鳥類としての判断基 準は,自然環境保全基礎調査 ( 環境庁,1981 年 ) で定められた繁殖可能性の判定基準(表 1)に準 拠した.今回の調査では,繁殖鳥類としては判定 基準 a,b,c のランク区分(a:繁殖確認,b:繁殖 の可能性がある,c:繁殖期に生息を確認したが 繁殖については不明)までとした. 沖永良部島での巣の状況を把握するため巣の 構造・巣材・巣の場所・営巣環境についてデータ を記録した.観察や写真記録については,繁殖行 動の障害にならないように最小限にとどめるよう 細心の注意を払った.報告した鳥類の種名・学名, 分類体系は「日本産野生生物目録」( 環境庁, 1993) に準拠した.

沖永良部島の繁殖鳥類(中村麻理子・鮫島正道)