セイタカシギ Himantopus himantopus (Linnaeus, 1758)はチドリ目セイタカシギ科の鳥類で,主に 旅鳥として渡来する.全長が約 40 cm,ピンク色 の細長い脚と黒色の細長い嘴が特徴である.生息 環境は海岸の浅瀬,干潟,ヨシ原,海岸近くの湿 地・湖沼・水田などで,繁殖は湖沼,沼沢の浅瀬 や海岸の岩石地などに営巣する.食性は動物質で 水棲昆虫・甲殻類・貝類・小魚などの小動物であ る. 世界中の熱帯から温帯に広く分布し,日本では 1960 年頃まで非常に稀な鳥とされていたが,徐々 に記録が増え越冬例も報告されている.千葉県や 東京都,愛知県で数つがいが繁殖に成功している が,日本での繁殖についての報告は少ない.セイ タカシギについての主な論文は,武内ら(1977), 育雛については小澤(2007)などがある.また絶 滅危惧種についての記載では加藤(2003),柳沢 (2004)がある.一般的生態については黒田(1969), 森岡ら(1989),佐藤(1994),山岸ら(2004)が ある. 鹿児島県における本種の飛来記録は少なく,出 水干拓,大浦干拓,国分干拓などの農耕地やその 周辺の干潟,トカラ列島中之島,奄美大島,徳之 島等があるが,繁殖についての報告はない.今回, 沖永良部島においてセイタカシギの一連の繁殖生 態を観察した.これまでの報告例からすると九州 地域での繁殖は初記録になる. 本種は生息環境の減少や悪化により個体数が減 少しており,環境省編「日本の絶滅のおそれのあ る野生生物」— レッドデータブック — と,鹿児 島県の「鹿児島県の絶滅のおそれのある野生動植 物」— 鹿児島県レッドデータブック — によれば, 絶滅危惧 II 類として掲載されている. 絶滅が危 惧される本種の保護のためには情報の蓄積が必要 であり,特に繁殖についての情報は鳥類の生態で 最も重要である.国内で報告がある繁殖環境は埋 め立て地が多く,琉球列島の一部である沖永良部 島のような島嶼での繁殖事例は貴重である. 今回繁殖生態に関する興味ある写真を得る事が 出来た.本報告では特徴的な繁殖生態写真を多く 用いた.

沖永良部島におけるセイタカシギの繁殖生態 ―九州での初記録―(中村麻理子・鮫島正道)