鹿児島大学郡元キャンパスは市街地に位置す るが,植物園(保存林)や実験実習地(農場)な どをはじめ植込み,生垣,草地,建物,舗装道路 などさまざまな環境をもつ.私は,郡元キャンパ スに出現するアリ類のさまざまな環境における種 多様性を比較し,多様な環境のモザイク的な存在 がキャンパス全体の種多様性にどのように貢献し ているかを研究テーマの一つとしている.これま でになされた鹿児島県本土におけるアリに関する 研究の結果と比較し,鹿児島大学郡元キャンパス のアリ相の特徴を明らかにするとともに,市街地 における隔離された森林(植物園)がどの程度森 林性のアリ相を保持しているかを評価したい. 2008 年,構内の 7 つの環境タイプに出現する アリの予備的なサンプリング(ベート法,単位時 間法,および任意採集)を行った.環境タイプご とに 3 地点を選び,それぞれにトランセクトを設 置した.ベートには粉チーズを用い,1 トランセ クト当り 15 ベート,合計 900 ベートを設置した. 単位時間法においては1トランセクト当り 10 分 間× 5,合計 16 時間 40 分をかけて見つけ取りに よってアリを採集した.ベート法によるサンプル 解析途中の結果に基づいて,これまでに判明した ことを簡単に紹介する. 今回の調査では,郡元キャンパス全体では 16 属 25 種のアリが確認され,植物園だけでは 11 属 13 種であった.山根ほか(1994)が行った調査(シ ロップベートを使用)と比較すると,「城山自然林」 (16 種)と郡元キャンパス(25 種)では共通する 種が 14 種で,前者からみれば 56% が,後者から みれば 88% が共通種であった.「甲突川緑地」(13 種 ) および「市街地」(11 種)と比較すると,郡 元キャンパスとの共通種はそれぞれ 9 種,11 種 であり,市街地で得られたアリの全種が郡元キャ ンパスでも見つかった. このことから,郡元キャンパスは全体として は市街地のアリ相をもっているが,一方で森林性 のアリ相の一部も保持しているといえる.今後は より精密なサンプリングを実施し,様々なタイプ の環境がアリの種多様性に貢献しているかどうか の結果を出せるよう努力したい.市街地にありな がらまとまった面積を有する植物園,隣接する玉 利池や実験実習地などの周辺環境は,教育・研究, 環境教育や自然体験学習の場であるばかりでな く,市民に憩いの場・散策の場を提供している. 次代へ引き継ぐべき貴重な資源である.ただ,植 物園ではアシジロヒラフシアリという外来性のア リが高い頻度で見られたことに注目したい.この アリは,人間活動に伴って分布域を拡げる放浪種 の一種である.この種の出現によって植物園のア リ相が変化する可能性があり,今後のモニタリン グが必要である.

鹿児島大学郡元キャンパスのアリ(福元しげ子)