Abstract / Introduction / Summary:
マンボウMola mola (Linnaeus, 1758)はマンボウ科Molidaeマンボウ属Molaに属し,世界中の温帯・熱帯海域に広く分布する大型のフグ目魚類である(Sawai et al., 2017b).日本近海において,マンボウはウシマンボウMola alexandrini (Ranzani, 1834)と混同されてきた長い歴史をもつ(例えば,Yoshita et al., 2008;澤井,2017).そのため,マンボウとして報告されてきた過去の研究の中にはウシマンボウの個体も含まれていた可能性があり,改めて両種を種レベルで明確に区別し,生態的知見を再蓄積することが求められている(松浦,2017).
大阪湾は瀬戸内海の最東端に位置する湾で,大阪府,兵庫県,和歌山県が面する閉鎖性海域である(公益社団法人瀬戸内海環境保全協会,2023).筆者が調べた限りでは,大阪湾からのマンボウ属の記録はいくらか確認されたものの(林,1987;前田,1991, 2003;新野,2004;水産庁瀬戸内海漁業調整事務所,1997, 2005;鴨川シーワールド,2010;波戸岡,2013),大阪府に属する海域からの記録は非常に少なく(宮田・岩井,1981;相良・小澤,2002;水産庁瀬戸内海漁業調整事務所,2011),また大阪府産のマンボウと明確に同定できる記録は見つからなかった.
このたび,2010年9月末に大阪府阪南市の西鳥取漁港内でマンボウ1個体の死骸が漂流していたとの情報が得られた.上述のように過去の記録はマンボウ属の種が明確ではなかったため,ここに大阪府産マンボウの確かな記録として報告する.